2-1 はじめに:この章で学ぶこと
この章では、Makeを使った簡単な自動化の構築を始めます。
構築の中でiPaaSの概念やMakeの用語を解説しながら進めます。2章を読み終わる頃には、iPaaSがどのようなものか、Makeの基本操作とサービスの全体像を掴んで頂けるはずです。
作成するシナリオ
まずは、今回作成するシナリオを紹介します。
「Notionに新しい問い合わせが追加されたら、Slackに通知を送る」
シンプルなシナリオですが、データを蓄積するサービスと、メッセージを送信するサービスを連携したよくある自動化の1つです。
このような自動化は、Makeを使えばノーコードで5分程度で構築可能です。
今回使用するサービスをよく知らない方のために、それぞれ簡単にご紹介します。
🔸 Notionとは?
Notion(ノーション)は、メモ、データベース、タスク管理、ドキュメントなどをひとつの画面でまとめて管理できるオールインワンの情報整理ツールです。直感的な操作でページやデータベースを作ることができ、社内の共有メモや問い合わせ管理など、業務の土台として使われることが多くなっています。
🔸 Slackとは?
Slack(スラック)は、チーム向けのチャットツールで、業務のやり取りをチャンネル単位で整理しながら効率的に行えるコミュニケーションサービスです。メールよりも気軽に連絡でき、通知やファイル共有もスムーズ。さまざまなツールと連携することで、業務のハブとして使われることが増えています。
ここからは、以下の内容をステップ・バイ・ステップで解説します。
- 事前準備 (各サービスのアカウント発行)
- iPaaSの基本概念 (トリガーとアクションについて)
- 具体的なシナリオの作成手順
- テスト実行とログの確認方法
- シナリオの有効化 (運用開始)
- iPaaSの仕組みについて
Makeの基本に触れながら、クラウドサービスをつなぐ感覚を体験できる最初の一歩として最適な内容です。
初めての方でも安心して進められるよう、図や補足も交えながら解説していきます。
2-2 事前準備 (各サービスのアカウント発行)
Makeのアカウントを登録(無料)
まずは、今回使用するiPaaS『Make』の登録から進めましょう。
以下のURLにアクセスし、アカウントの登録を行います。
https://www.make.com/en/register
名前、メールアドレス、パスワード、リージョン、国を選びます。
※リージョンはUSとEUどちらでも問題ありません。
認証が完了すると、アンケートが表示されますので、回答しながら進めます。回答によって使える機能が変わることはありません。
すべての回答が終わると、「Get Started」ボタンが表示されますので、クリックして登録完了です。
ダッシュボード画面が表示されますので、Makeはこの画面で置いておきましょう。
Notionのアカウントを登録(無料)
続いて、以下のURLからNotionのアカウントを登録します。既に持っている方はスキップして下さい。
アンケートなどが表示されますので、画面に沿って登録を進めます。
クレジットカードの入力画面が表示されたら、最下部の「いいえ、フリープランを継続します」をクリックします。
登録が完了し、ダッシュボード画面が表示されます。
Notionテンプレートをコピー
今回は連携に使用するNotionのテンプレートを用意しましたので、ご自身のNotion内にコピーして下さい。
上記URLにアクセスし、画面右上の「複製」ボタンをクリックすると、テンプレートをコピーできます。
Slackのアカウントを登録(無料)
最後に、以下のURLからSlackのアカウントを登録します。既に持っている方はスキップして下さい。
https://slack.com/get-started#/createnew
新規登録時はワークスペースの作成が必要になりますので、画面に沿って登録を進めます。
登録が完了すると、プランの案内が表示されますので、『制限つきのフリープランで開始する』を選択して下さい。
登録が完了し、ホーム画面が表示されます。
これで、今回のシナリオ作成に必要なサービスの準備が整いました。
2-3 iPaaSの基本概念 (トリガーとアクションについて)
実際にシナリオ作成に入る前に、iPaaSのシナリオ作成に関する基本的な概念について説明します。
iPaaSで自動化を作るとき、必ず出てくるのが「トリガー」と「アクション」という考え方です。
これは、「何が起きたら(トリガー)」「何をするか(アクション)」という、基本の流れを表しています。
🔹 トリガーとは?
トリガーは、シナリオをスタートさせる「きっかけ」です。
たとえば…
- Notionで新しいページが追加された
- フォームに回答が送信された
- 特定の時間になった(日時トリガー)
など、「何かが起きたときに自動化を開始する条件」がトリガーです。
▶ 今回のシナリオでは:
→「Notionで新しいページが作られたら」がトリガーになります。
🔸 アクションとは?
アクションは、トリガーのあとに実行される処理のことです。
たとえば…
- Slackにメッセージを送る
- スプレッドシートにデータを追加する
- メールを送信する
など、「トリガーを受けて何らかの処理を自動で行う」のがアクションです。
▶ 今回のシナリオでは:
→「Slackに通知を送る」がアクションになります。
🔁 トリガー+アクション=自動化の基本形
iPaaSでは、この「トリガー → アクション」の形がすべての自動化の出発点です。
複雑なシナリオでも、まずはこの流れがベースになります。
この仕組みを理解すれば、他の自動化もどんどん作れるようになります。
次のセクションでは、実際にこの構成をMakeで作ってみましょう。
2-4 具体的なシナリオの作成手順
Makeのダッシュボード画面右上の「Create a new scenario」をクリックします。
シナリオを作成する画面が表示されます。
ここにアプリやプロセスを示す「モジュール」を追加していく事で、自動化ワークフローを作成します。
トリガーモジュールの設置 (Notion)
今回はまず、「Notionに新しい問い合わせが追加された」事を検知するモジュールを作成します。
アプリの検索欄に、「notion」と入力します。
アプリが絞り込まれるので、一番上のアプリ名「Notion」をクリックします。
一覧から「Watch Database Items(データベースのアイテムを監視)」を探し、クリックします。
シナリオにNotionのモジュールが追加されます。これが今回のトリガーになります。
続いて、MakeとNotionを繋ぐ、コネクションを作成します。
「Create a connection」をクリックします。
Connection typeは「Notion Public」を選択し、「Save」ボタンをクリックします。
別ウィンドウで認証画面が立ち上がります。
この認証を行うことで、Makeが連携したNotionアカウントに自動的にアクセスできるようになります。
「ページを選択する」をクリックします。
続いて、Makeにアクセスを許可するページを選択します。
今回は先程追加した「お問い合わせ管理 – テンプレート」にチェックを入れ、「アクセスを許可する」をクリックします。
※アクセスを許可するページは後でNotion側から変更できます。
Notionとのコネクションが作られました。
続いて、モジュールの設定を行います。
このモジュールでは、NotionのデータベースIDを指定する必要があります。
一度Notionの画面に切り替え、NotionのURLからデータベースIDをコピーします。
※以下のURL部分がデータベースIDです。
コピーしたデータベースIDをモジュール設定のDatabase IDに入力します。Limitは「10」に設定し、「Save」をクリックします。
Watch Database Itemsは「By created time」のままでOKです。
最後に、Notionデータベースの監視をどこ(いつ)からスタートするかという選択が表示されますので、「From now on (今から)」 を選択し、「Save」をクリックします。
これで、Notionモジュールの設定が完了しました。
今回追加したモジュールをおさらいしておきます。
【今回設定したトリガーモジュールの解説】
トリガー名:Watch Database Items (notinoのデータベースを監視)
モジュールの設定:
By created time (アイテムの作成時間を監視する)
Limit 10 (最大10件取得する)
From now on (トリガー設定時から監視を始める)
つまり、このトリガーは、”このトリガーを設置した後にNotionに新しく追加されたアイテムを最大10件取得する”というトリガーになります。
(トリガーを実行する度に新しく追加されたアイテムを取得します。一度取得したアイテムは再取得されません。)
アクションモジュールの設置 (Slack)
続いて、「Slackに通知を送る」モジュールを追加します。
先ほど追加した、Notionモジュール横の「+」ボタンをクリックします。
ここから次のモジュールを追加できます。
今度は「slack」と検索し、一番上の「Slack」をクリックします。
表示されたアクションの中から「Create a Message」を探し、クリックします。
Slackのモジュールが追加されました。
先ほどと同じように、「Create a connection」をクリックし、MakeとSlackのコネクションを作成します。
Connection typeは「Slack (user)」を選択し、「Save」ボタンをクリックします。
別ウィンドウで認証画面が立ち上がります。
この認証を行うことで、Makeが連携したSlackアカウントに自動的にアクセスできるようになります。
「許可する」をクリックします。
Slackとのコネクションが作られました。
続いて、モジュールの設定を行います。
このモジュールでは、SlackのチャンネルIDを指定する必要があります。
一度Slackの画面に切り替え、SlackのURLからチャンネルIDをコピーします。
※以下のURL部分がチャンネルIDです。
コピーしたチャンネルIDをChannel ID or nameに入力します。
続いて、Textに「お問い合わせが追加されました。」と入力します。
入力欄に文字を入力した際、左側に黒いブロックが複数表示されています。
これは、前のモジュールの実行結果です。
iPaaSでは基本的に、前のモジュールの実行結果を、後続のモジュールで参照する事ができます。
今回は、先にNotionモジュールを実行していますので、その結果をSlackのモジュールで使用できます。
左側の黒いブロックから、「URL」とタイトルの中にある「Content」を探し、クリックします。
以下の画像を参考に入力してみて下さい。
入力できたら、「OK」ボタンを押して、モジュールの設定は完了です。
【今回設定したアクションの解説】
アクション名:Create a Message (新しいメッセージを作成)
モジュールの設定:
メッセージのテキストとして、
・「お問い合わせが追加されました。」
・NotionページのURL
・Notionページのタイトル」
を送信する。
2-5 テスト実行とログの確認方法
シナリオをテスト実行する方法
作成したシナリオをテスト実行してみましょう。
テスト実行する際は、画面左下の「Run once」をクリックします。
実際にクリックしてみると、以下のような結果になります。
Notionのモジュールが実行されていますが、Slackのモジュールが実行されていません。
これは、今回追加したトリガーが、”このトリガーを設置した後にNotionに新しく追加されたアイテムを最大10件取得する”という設定になっているために起こっています。
モジュール設置後にNotionに新しく追加されたアイテムが存在しないため、「Notionにアイテムを取りに行ったが、新しいアイテムが無かった」という状態です。
一度Notionの画面に切り替え、以下のように新しいアイテムを追加してみましょう。
改めて、Makeの画面左下の「Run once」をクリックし、シナリオをテスト実行します。
今回はSlackのモジュールまで正常に動作しました。
実際にSlackの画面を確認してみると、指定したチャンネルにMake側で設定したメッセージが送信されている事が確認できます。
モジュールの実行ログを確認する方法
テスト実行後に各モジュールの右上に表示されている吹き出しからは、そのモジュールへのインプットとアウトプットを確認できます。
このモジュールがどんなデータを受け取って、どんなデータを出力したのかです。
以下はNotionモジュールの実行結果です。
このモジュールはインプットがありませんが、アウトプットにNotionから取得したアイテムの情報が出力されています。
Makeではモジュール単位で詳細なログを確認できる、運用面でも非常に優れています。
2-6 シナリオの有効化 (運用開始)
最後に、シナリオの実行スケジュールを設定し、シナリオを有効化してみましょう。
Notionモジュールに最初から付いている、時計アイコンをクリックします。
ここで、トリガーの実行スケジュールを設定できます。
色々なスケジュールが設定ができますので、試して見て下さい。
今回はデフォルトの15分おきに実行のまま「Save」をクリックします。
シナリオをアクティブするか確認されますので、「Activate scenario」をクリックして有効化します。
最後に画面左上のシナリオ名を分かりやすい名前に変更しておきましょう。
変更したら、画面左下の保存アイコンをクリックして、シナリオを保存します。
これで、「Notionに新しい問い合わせが追加されたら、Slackに通知を送る」を実現するワークフローが完成しました。
2-7 まとめ:iPaaSの仕組みについて
ここまでで、Makeを使った基本的なシナリオの作成方法をご紹介しました。iPaaSとはどのようなツールなのか、ある程度ご理解いただけたのではないでしょうか。
連携の概念図
今回の手順では、フローを構築する中で、Makeから各サービスとの連携認証を行い、「コネクション」を作成しました。
iPaaSは、各サービスとアカウント単位の認証を行った上で、各サービスが提供するAPIを使用して、様々なトリガーやアクションを実行します。
iPaaSの種類によって用語や画面の構成は異なりますが、基本的な概念は同じです。サービス間の「接続(コネクション)」を作成し、それをもとに「トリガー」と「アクション」を組み合わせてワークフロー(シナリオ)を構築するという流れになっています。
次章のご案内
ここまでは「できること」を知ってもらうパートでした。
第3章では、実務レベルの自動化を一から一緒に構築します。
- 外部からのメール受付を自動処理
- 本文から必要情報を抽出
- Notionに記録+Slackに即時通知
など、業務でそのまま使えるノウハウが詰まった内容です。
第3章で学べる事
- ✅ メール受信をトリガーにする方法
- ✅ メール本文から任意のテキストを抽出する方法
- ✅ Notionの新しいモジュール(「Create a Database Item」)の使い方
- ✅ 必要な情報だけを自動処理する「実用的なシナリオ設計」
これらの機能を活用し、より現場で使える自動化フローをステップ・バイ・ステップで丁寧に解説します。
💡第3章では実務レベルの自動化を構築します。Makeの活用レベルを一段引き上げたい方は、ぜひご覧下さい。
お問い合わせ対応や社内連携など、現場で“すぐに使える”フローを一緒に作っていきましょう。