1-1 はじめに ― なぜ今、iPaaSを学ぶべきなのか?
近年、業務におけるクラウドサービスの利用は急速に拡大しています。
メール、チャット、ドキュメント管理、スケジュール調整、顧客対応など、多くの企業が複数のSaaS(クラウドサービス)を組み合わせて日々の業務を進めています。
しかし、その一方でこんな課題も生まれています。
- それぞれのツールの間を手作業で行き来している
- 情報の転記や通知作業に無駄な時間を使っている
- データが分散し、属人化やミスが起きやすい
このような課題を解決し、業務の自動化・効率化を推進する仕組みとして注目されているのが、iPaaS(Integration Platform as a Service)です。
iPaaSを使えば、異なるサービス間のデータや処理をつなぎ、人の手を介さずに自動で処理を流すことができます。
さらに近年では、AIの導入が急速に進んでいます。ChatGPTなどの生成AIを活用するには、AIに渡す情報の整理・自動収集・通知といった「前後処理」が必要になることも多いです。
iPaaSはまさに、こうしたAI活用の“土台”としても活躍します。
iPaaSを使えるようになると…
- 自社に合った業務の自動化ツールを作れる
- 少人数・非エンジニア体制でもDXを進められる
- AIと組み合わせて、問い合わせ分類や文書整理などを高度化できる
この教材では、iPaaSツールの中でも特に視覚的に操作できて導入しやすい「Make」を使いながら、実践的なシナリオを通して学んでいきます。
日本の労働人口が減少する中で、『業務自動化という新たなスキルを身に着けたい。』『自社の業務改善を実施したい。』と考えている方がiPaaSに触れるきっかけになればと思い、作成しました。
ノーコードでエンジニア経験がない方でもステップ・バイ・ステップで学べる教材になっていますので、是非チャレンジしてみて下さい。
次のセクションでは、そもそも「iPaaSとは何か?」について、さらに詳しく解説していきます。
1-2 iPaaSとは何か?
クラウドサービスは増え続けている
業務で使うサービスは、以前と比べて格段に増えました。
例えば、次のようなサービスをいくつも併用していませんか?
- Gmail や Outlook(メール)
- Slack や Teams(チャット)
- Notion や Google ドキュメント(情報管理)
- Google スプレッドシート(データ整理・報告)
- ChatGPT(AIによる支援)
これらのツールはそれぞれ非常に便利ですが、「連携して使う」には課題があります。
手作業の限界
たとえば、以下のような作業が日常的に発生していませんか?
- メールで届いた問い合わせをNotionに転記
- フォームの回答をスプレッドシートにコピペ
- 新着情報をチームにチャットで通知
これらは、単純だけど時間がかかる作業です。人の手で行っていると、ミスが発生しやすく、属人化もしがちです。
iPaaSとは「ツールを自動でつなぐ仕組み」
ここで登場するのが iPaaS(Integration Platform as a Service) です。
iPaaSは、異なるクラウドサービス同士をつなぎ、自動的に情報を受け渡すプラットフォームです。
イメージとしては、「バラバラに点在しているアプリをつなぐ配線のようなもの」です。
人が介在しなくても、条件を満たしたら次のツールに処理を流すことができます。
iPaaSでできること(例)
- Gmail → Slack:特定の件名のメールをSlackに通知
- Google フォーム → Notion:回答内容をNotionに自動記録
- Google スプレッドシート → ChatGPT:データを使って自動要約・分類
- フォーム送信 → 請求書発行(PDF)→ メール送信:問い合わせ対応を完全自動化
以下のように一連の業務フローを自動化する事もできます。
iPaaSの主なメリット
- プログラミング不要:ノーコード/ローコードで構築可能
- 時間の節約:単純作業を自動化して、より価値ある仕事に集中できる
- ミスの削減:手作業に伴う記入漏れや通知忘れを防止
- 拡張性が高い:複数のサービスを組み合わせて自由にフローを設計可能
- AIとの連携がしやすい:AIに渡すデータ整形や前後処理にも活用できる
どんな人がiPaaSを使うべきか?
iPaaSは、次のような方に特におすすめです。
- 業務効率化やDXを推進する立場にある方(例:業務改善担当・経営者)
- 1つ1つの手作業に限界を感じている現場の方
- IT部門が手薄な中小企業や個人事業主
- ノーコードで業務自動化を実現したい方
このように、iPaaSは「日々の業務をもっとスマートに、自動で回す」ための重要な基盤です。
次のセクションでは、iPaaSツールの中でも私が特に使いやすいと思っている「Make」について紹介していきます。
1-3 Makeとは?
ノーコードで使えるiPaaS「Make」
Make(メイク)は、iPaaSツールの一種で、ノーコードで使えるクラウド型の自動化プラットフォームです。
もともとは「Integromat(インテグロマット)」という名前でしたが、2022年にリブランディングされ、「Make」としてより直感的でビジュアルなインターフェースが特徴のツールに生まれ変わりました。
Makeでできること
Makeを使うと、以下のような「自動化シナリオ」(※Makeでは「シナリオ」と呼びます)を簡単に作れます。
- Notionで新しいページが作成されたら、Slackに自動通知
- 特定のラベルがついたGmailの内容をスプレッドシートに記録
- お問い合わせフォームの送信内容をNotionに保存し、担当者にメールで連絡
これらの処理を、Makeではドラッグ&ドロップの操作だけで構築できます。
特徴①:ビジュアルなシナリオ作成画面
Makeの最大の特徴は、処理の流れをフローチャートのように視覚的に作成できることです。
- 各処理(例:Notionにデータを追加、Slackに通知)を「モジュール」としてつなげていく
- 条件分岐やループ、フィルターなどもアイコンで視覚的に操作可能
- 処理の結果をリアルタイムで確認できるテスト実行機能あり
このため、非エンジニアの方でも操作を理解しやすく、直感的に構築できます。
特徴②:幅広いアプリとの連携
Makeは、1,000以上のクラウドサービスと連携可能です(2025年時点)。
- 業務系:Slack、Gmail、Google Sheets、Notion、Airtable、Trello、Dropbox、ChatGPT など
- マーケティング系:HubSpot、Mailchimp、Google Ads など
- 開発・運用系:Webhook、HTTPリクエスト、JSON処理も可能
さらに、Webhooksやローコードにも対応しているため、学習を進めるとかなり高度な自動化も実現できます。
特徴③:無料プランで始められる
Makeは、月1,000オペレーションまでは無料で使えるプランがあります(2025年5月現在)。
学習用や小規模な業務自動化であれば、無料でも十分活用可能です。
- 無料プラン:月1,000操作まで。一般的なモジュールが使用可能。(私が自動化を支援しているクライアントは7割近くが無料のまま運用されています。)
- 有料プラン:処理回数の上限が大幅アップ。リアルタイム処理や高度なサポートなど。
他のiPaaSとの違いは?
- Make:フロービルダーが直感的で初学者にも使いやすい。細かい条件分岐やデータ操作もできる。ステップアップで複雑なフローも作りたい人向け。
- Zapier:シンプルなUI。初学者にも使いやすい。できるだけ簡単に自動化を始めたい人。
- Power Automate:Microsoft製。Office製品との連携に強い。ランニングコストが高くなりがち。Microsoft環境で統一されている企業向け。
- n8n:オープンソースで自由度が高い。エンジニアや自社環境に合わせて細かく制御したい人。難易度が高い。エンジニア向け。
まとめ:Makeは「ノーコードで業務を整える最初の一歩」
Makeは、複数のクラウドサービスを簡単につなぎ、業務の自動化を実現できる強力なツールです。
特に、NotionやSlackなどを使っている中小企業や個人事業主にとっては、コストを抑えて業務改善を進められる有力な選択肢となるでしょう。
次章のご案内
クラウドサービスをもっと便利につなぎたい。
自社の業務にあった自動化を、手軽に始めてみたい。
そんな方にとって、Makeは最適なスタート地点です。
次の第2章では、
✅ Makeの基本操作
✅ シンプルなシナリオの作成方法
✅ NotionとSlackを連携させる具体例
などを、ステップ・バイ・ステップで丁寧に解説します。
💡Makeを初めて使う方でも安心して学べる内容になっています。
まずは一緒に、「クラウドツールをつなぐ楽しさ」と「業務が変わる感動」を体験してみましょう。