RPAとは
RPA(Robotic Process Automation)は、これまで人間が手作業で行っていたPC上の定型業務を、ソフトウェアのロボットが代行・自動化する技術のことを指します。

得意な業務(定型業務)
- ルール化されている: 「AならBする」という判断基準が明確なもの。
- 繰り返し発生する: 毎日、毎週など頻度が高い作業。
- 大量のデータ処理: 人間だと疲れてミスが出そうな膨大な入力作業。
- 複数アプリをまたぐ: Excelから在庫システムへ転記するなど。
苦手な業務(非定型業務)
- 高度な判断が必要: その場の状況に応じて「空気を読む」ような判断。
- ルールが頻繁に変わる: 手順がコロコロ変わると、ロボットも混乱して止まってしまいます。
- 手書き文字や紙の処理: デジタルデータ化されていないものは、OCR(文字認識)などの別技術が必要です。
生成AIとは
生成AI(Generative AI)とは、学習したデータをもとに、文章、画像、動画、音声などの新しいコンテンツを「ゼロから作り出す」ことができるAIのことです。

生成AIができること
テキスト生成(LLM)
質問への回答、文章の要約、翻訳、キャッチコピーの作成、プログラミングコードの記述など。
代表例:ChatGPT, Claude, Gemini
画像生成
キーワード(プロンプト)を入力するだけで、写真のようなリアルな画像やイラストを生成。
代表例:Midjourney, Stable Diffusion, DALL-E 3
動画・音声生成
テキストから動画を作成したり、特定の人物の声を模倣したナレーションを生成。
代表例:Sora (動画), Sunno (音楽)
RPAと生成AIの連携がもたらす業務変革
1. 従来の課題:単体では限界がある
これまで、RPAとAIはそれぞれ以下のような課題を抱えていました。
AI単体の課題: AIはチャットなどの入力インターフェースを通じて高度な回答を生成しますが、それ単体で他のアプリを操作したり、ファイルを保存したりといった「実務の実行」を行うのは困難です。業務フローの中にAIを組み込もうとしても、AIの回答を人間がコピー&ペーストして別のソフトに入力する手間が残っていました。
RPA単体の課題: RPAは指示通りの正確な操作が得意ですが、「人の判断」や「曖昧なデータの解釈」が必要な場面に弱いという特徴があります。複雑なデータ加工や、非定型の文章解析が必要な場合、結局は部分的に人間がプログラムを書くか、手作業で補う必要がありました。
2. RPA×AIで「自動化の領域」が劇的に拡大する
この両者を組み合わせることで、「AIが考え、RPAが動く」という一気通貫の自動化フローが完成します。
具体的な連携イメージ
データの受け取り(RPA):メールや紙の伝票(OCR経由)から情報を取得。
内容の判断・加工(AI):取得した情報が「何について書かれているか」を解釈し、必要な形式に整理・要約する。
システムへの実行(RPA):AIが加工したデータをもとに、会計ソフトや顧客管理システムへ自動で入力する。
3. RPAと生成AIの連携によって実現できる具体例(6つ紹介)
RPAとAIを組み合わせることで、以下のような高度な自動化が実現します。
問い合わせメールの自動仕分けと返信案作成
顧客からブラウザベースのメール(GmailやOutlook Webなど)に届く問い合わせに対し、内容に応じた一次対応を自動化します。

- RPAの役割(画面操作): ブラウザでメール画面を開き、未読メールの件名と本文をコピーします。
- 生成AIの役割(判断・作成): 本文を解析し、「苦情」「見積依頼」「操作質問」などに分類します。さらに、その内容に合わせた丁寧な返信のドラフト(下書き)を自動作成します。
- 連携後の動き: RPAがAIの作った返信案をブラウザの返信欄に貼り付け、「下書き保存」まで行います。人間は内容を確認して送信ボタンを押すだけで済みます。
ECサイトや競合情報の調査・要約レポート
ブラウザで特定の商品や競合他社の情報を収集し、自社にとって意味のある形にまとめて報告します。

- RPAの役割(画面操作): 指定した複数のWebサイト(Amazon、楽天、競合HPなど)を巡回し、価格、レビュー、新製品情報などのテキストデータをスクレイピング(抽出)します。
- 生成AIの役割(分析・要約): 膨大な収集データから「今週のトレンド」や「競合の値下げ傾向」を分析・要約し、会議でそのまま使えるレベルの報告文を作成します。
- 連携後の動き: RPAが生成された要約文をブラウザ上の社内チャット(SlackやTeams)や日報システムに入力・送信します。
商品情報の翻訳と多言語展開(越境EC)
日本のECサイトにある商品情報を、海外のECプラットフォーム(Amazon.comやeBayなど)向けに最適化して出品する業務です。

- RPAの役割(ブラウザ操作): 自社の在庫管理ブラウザから商品名、スペック、説明文を取得。その後、海外ECサイトの出品フォームを開きます。
- 生成AIの役割(翻訳・ローカライズ): 単なる翻訳ではなく、現地の消費者に響くマーケティング表現への書き換えや、現地の単位(cmからinchなど)への変換、適切なカテゴリー選択のアドバイスを行います。
- 連携後の動き: RPAがAIの作成した現地語の紹介文を、海外サイトのブラウザ画面へ自動入力して出品します。
Web領収書・請求書の「仕訳推論」と自動入力
Amazonやクラウドサービス、公共料金などのブラウザ上で発行される領収書を、会計ソフトへ登録する業務です。

- RPAの役割(画面操作): 各サービスのマイページにログインし、PDF領収書をダウンロード、または画面上の決済金額や支払先情報をコピーします。
- 生成AIの役割(勘定科目の判定): 支払先の社名や品名から、「これは『接待交際費』ではなく『会議費』が妥当」といった判断を行い、適切な勘定科目を推論します。
- 連携後の動き: RPAがクラウド会計ソフト(マネーフォワードやfreeeなど)のブラウザ画面を開き、AIが判定した科目とともに金額を入力します。
不動産や求人情報の「物件・募集要項」のリライト(書き換え)
他社サイトやポータルサイトにある情報を、自社サイト用に「言い換え」て掲載する業務です。

- RPAの役割(画面操作): ブラウザで元データがあるサイト(不動産サイトや求人サイト)を開き、スペック情報や説明文を取得します。
- 生成AIの役割(リライト・抽出): 元の文章をそのまま載せるとコピーコンテンツになってしまうため、「親しみやすい表現にリライト」したり、箇条書きから「魅力的な紹介文」に変換したりします。
- 連携後の動き: RPAが自社の物件登録システムやCMS(Wordpressなど)のブラウザ画面を開き、新しく生成された文章を各項目に自動入力します。
中古車オークションデータの「相場分析・コメント作成」
オークションサイトに並ぶ大量の車両データから、買い付けの判断材料や販売用コメントを作る業務です。

- RPAの役割(画面操作): 中古車オークションの会員サイトにログインし、出品車両の年式、走行距離、修復歴、内装状態などの詳細テキストを取得します。
- 生成AIの役割(車両状態の評価): 検査員の専門的なメモ(「〇〇に小傷あり」「エンジン音〇〇」など)を解釈し、車両の良し悪しを総合評価。さらに販売サイトに載せるための「セールスポイント」を自動作成します。
- 連携後の動き: RPAが社内の価格決定システムや自社販売サイトのブラウザ画面に、AIの評価結果と紹介文を入力します。
生成AIとの連携におすすめのRPAツール
UiPath
大規模・高度なAI活用
- 特徴: 生成AIだけでなく、自社独自のドキュメント解析AIなどを組み込む「AI Center」が強力です。
- AIとの歩み寄り: 「Autopilot」という機能により、自然言語で自動化ワークフロー自体を作成したり、AIがブラウザ上の要素を自動判別したりする能力が非常に高いです。
- こんな時に: 「全社のあらゆる業務を、セキュアかつ高度なAI判断で一元管理したい」場合。

クラウドBOT
ブラウザ特化×外部AI連携
- 特徴: 自身のサーバーではなくクラウド上でボットが動くため、24時間稼働が容易です。
- AIとの歩み寄り: RPAのシナリオ内でChatGPT、Geminiなどを呼び出せる。生成AIを利用するためにユーザが別途契約する必要がない。RPAだいけでなく、自動判断で操作を行うAIエージェント「Cloud BOT Operator」が自動化の範囲を飛躍的に広げます。
- こんな時に: 「特定のWebサイトから情報を抜き出し、AIに要約させて、別のWebフォームに入れる」といったブラウザ完結のシンプルかつ高速な連携をしたい場合。

Power Automate
- 特徴: Microsoft 365環境であれば、ログイン不要でGPT-4などのモデルを利用できる「AI Builder」が使えます。
- AIとの歩み寄り: ワークフローの途中に「AIでテキストを要約する」「センチメント分析をする」というカードを置くだけで連携が完了します。
- こんな時に: 「ExcelやTeams、Outlookを組み合わせて、手軽にAI自動化を始めたい」場合。

RPAと生成AIを連携させる際、どのツールを選ぶかは「現在使っているIT環境」と「どれだけ高度なことをしたいか」によって決まります。
業務の中心がクラウドツールが多いのか、デスクトップアプリケーションが多いのか。また、生成AIにどのような業務を依頼したいのかを明確にすると、ツール選びが進みやすくなるでしょう。
| 比較項目 | UiPath | クラウドBOT | Power Automate |
|---|---|---|---|
| 製品の特徴 | 世界シェア1位の多機能RPA。デスクトップもブラウザも高度に制御可能。 | ブラウザ操作に特化したクラウド型RPA。API連携が非常に得意。AI機能が豊富 | MS製品との親和性が抜群。安価で導入しやすい標準的ツール。 |
| AI連携の特徴 | 「AI Center」で独自のAIモデルも管理可能。生成AI専用のコネクタが豊富。 | RPAのシナリオ内で生成AIを使用できる。AI-OCR、AIエージェントも完備。 | 「AI Builder」や「Copilot」を標準搭載。プロンプト作成画面が内蔵されている。 |
| 費用感 | 高め(年額数百万円〜)。小規模向けのPro版もあるが基本はエンタープライズ向け。 | 安め〜中程度。月額数千円から利用でき、実行数に応じたプラン。 | 安め(月額約2,250円/人〜)。AI Builder利用には追加コストが必要。 |
| 難易度 | 高め。専門的な知識が必要だが、できないことはほぼ無い。 | 低〜中。ノーコードで直感的にブラウザ操作を記録できる。 | 中~高。日本語情報が多く、MS製品ユーザーなら馴染みやすい。 |
まとめ
RPAとAIを組み合わせることは、単なる「作業の効率化」に留まりません。「非定型な情報の処理」と「多種多様なアプリ操作」を繋ぐことで、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を一段階上のステージへと引き上げる鍵となります。
事例の収集に加えて、無料で使い始める事ができる、Power Automate DesktopやクラウドBOTを実際に使ってみると業務効率化のイメージがつきやすくなると思います。